洗足学園中2024年度理科 水の硬度とキレート滴定

問題

水の硬度について園子さんと先生が話しています。

園子さん 「先日、温泉に行ってきました。せっけんの泡立ちが悪かったので、調べてみたら、水には硬度というものがあることを知りました。水の硬度について教えてください。」

先生 「水1L(1000mL)中に溶けているカルシウムとマグネシウムの量を表わした指標を『硬度』というんだよ。

(硬度〔mg/L〕)=(1L中に溶けているカルシウム量〔mg〕×2.5)
         +(1L中に溶けているマグネシウム量〔mg〕×4.1)

で表すことができるんだよ。」

園子さん 「硬度が違うと味も違ったりするのですか。」

先生 「WHOの飲料水水質ガイドラインでは、硬度が60mg/L未満の水を『軟水』、60以上120mg/L未満の水を『中程度の軟水』、120以上180mg/L未満の水を『硬水』、180mg/L以上の水を『非常な硬水』と分類しているよ。日本の水道水はおいしさの面から目標値が10以上100mg/L未満に設定されているよ。」

園子さん 「わかりました。国や地域による水の硬度の違いについて調べてみます。」

[学習メモ1]
・図1は、日本全国における水道水の水源となっている表流水(地表を流れる水)と地下水の硬度ごとの割合を示した棒グラフである。水道水の硬度は、水源の種類に大きく影響される。

図1

・地層には石灰岩が多く含まれている場所がある。その地層を通った水には、カルシウムが多く含まれ、鍾乳石や鍾乳洞を形成することがある。
・ヨーロッパの水は石灰岩が多く含まれている地域を長い時間をかけて通るため日本の水に比べると、硬度は高い。
・硬水でせっけんを使用すると泡立ちが悪く、洗浄しにくい。

(1)2人の会話と[学習メモ1]より考えられることを、次より2つ選び、記号で答えなさい。

ア.カルシウムは鍾乳石の形成に関わらない。
イ.地下水の方が表流水に比べ、カルシウムやマグネシウムの濃度は高い傾向がある。
ウ.日本の水道水の水源には、WHOの基準で「非常な硬水」と分類される水はない。
エ.ヨーロッパの水は日本の水と比べて軟水の割合が大きい。
オ.園子さんが行った温泉の水は硬度が高い。

(2)石灰岩について述べたものとして正しいものを、次より1つ選び、記号で答えなさい。

ア.石灰岩を水に溶かした水溶液に二酸化マンガンを加えると酸素が発生する。
イ.石灰岩を水に溶かした水溶液にBTB液を加えると黄色になる。
ウ.石灰岩は水酸化ナトリウム水溶液に溶けて、水素を発生する。
エ.石灰岩は塩酸に溶けて、二酸化炭素を発生する。
オ.石灰岩は非常に硬く、金属の切断などに使用される。

園子さんはさらに、硬度を調べる方法としてキレート滴定実験というものがあることを知りました。そこで、キレート滴定実験について調べ、[学習メモ2]にまとめ、実験を行いました。

[学習メモ2]
1.キレート滴定実験には、試薬Aと試薬Bを使用する。
2.試薬Aはアルカリ性の水溶液に入れると青色になる。水溶液中のカルシウムやマグネシウムとくっつくと赤色になる。
3.試薬Bはアルカリ性の水溶液に入れても無色である。水溶液中のカルシウムやマグネシウムとくっついても無色のままである。
4.水溶液中のカルシウムやマグネシウムは、それぞれ試薬Aや試薬Bとくっつく際に互いに影響を及ぼさない。
5.試薬A、試薬Bはどちらも水溶液中のカルシウムやマグネシウムとくっつき、試薬を加えることで水溶液の液性(酸性、中性、アルカリ性のこと)が変わることはない。また、液性によって水溶液中のカルシウムやマグネシウムの量が変わることはない。

硬水をアルカリ性にして、試薬Aを混ぜると赤色になるが、そこに試薬Bを少しずつ加えていくと徐々に色が変化し、青色になる。このことを利用して、水溶液中のカルシウムやマグネシウムの量を知ることができる。

【実験1】
さまざまな量のカルシウムを溶かした水溶液を10mLずつ入れた試験管を2本ずつ用意し、それぞれ1本目には①、2本目には②の操作を行い、結果を表1にまとめた。

① 水溶液をアルカリ性にしてから試薬Aを十分に入れ、混ぜた。その後、試薬Bを加え、水溶液が青くなるまでに加えた試薬Bの量をはかった。
② うすい硫酸を十分に加えて沈殿を生じさせた。それぞれの沈殿をろ過し、乾燥させ、重さをはかった。

表1
カルシウム〔mg〕:0.6、1.2、2.0、3.0
①試薬Bの量〔mL〕:1.5、3.0、(あ)、7.5
②沈殿の重さ〔mg〕:2.04、4.08、6.80、(い)

【実験2】
【実験1】と同様の実験をカルシウムの代わりにマグネシウムを用いて行った。その結果を表2に示した。

表2
マグネシウム〔mg〕:0.3、0.6、(う)、2.4
①試薬Bの量〔mL〕:1.25、2.5、5.0、10
②沈殿の重さ〔mg〕:0、0、0、0

(3)表1、表2の(あ)~(う)に当てはまる数値を求めなさい。小数第2位以下がある場合は、四捨五入して小数第1位まで答えなさい。

(4)【実験1】①の実験は試薬Aと試薬Bのちがいを利用しています。どのようなちがいですか。「水溶液中のカルシウムやマグネシウムは」に続く文を完成させなさい。

【実験3】
硬水の温泉水Cを10mLずつ入れた試験管を2本用意した。1本目に【実験1】①の実験を行ったところ、試薬Bの量は6.5mLとなった。2本目に【実験1】②の実験を行ったところ沈殿の重さは6.12mgとなった。

(5)温泉水C 10mLの中に含まれているカルシウムの量は何mgですか。小数第3位以下がある場合は、四捨五入して小数第2位まで答えなさい。

(6)温泉水C 10mLの中に含まれているマグネシウムの量は何mgですか。小数第3位以下がある場合は、四捨五入して小数第2位まで答えなさい。

(7)温泉水Cの硬度は何mg/Lですか。小数第2位以下がある場合は、四捨五入して小数第1位まで答えなさい。

(8)温泉水Dを調べたら、硬度が406mg/L、カルシウム〔mg/L〕:マグネシウム〔mg/L〕=3:1と書かれていました。1Lの温泉水Dに含まれるカルシウム、マグネシウムの量は何mgですか。それぞれ小数第1位以下がある場合は、四捨五入して整数で答えなさい。

大問2の枠付き番号、導入会話、硬度の計算式、WHOの硬度分類、学習メモ1および表流水・地下水の硬度分布を示す図1
洗足学園 2024年度入学試験 理科 大問2から引用
学習メモ1の石灰岩・ヨーロッパの水・せっけんに関する条件と設問(1)(2)
洗足学園 2024年度入学試験 理科 大問2から引用
キレート滴定に関する学習メモ2、実験1の操作およびカルシウム量・試薬B量・沈殿量を示す表1
洗足学園 2024年度入学試験 理科 大問2から引用
実験2の表2、設問(3)(4)、温泉水Cを用いる実験3、設問(5)~(8)
洗足学園 2024年度入学試験 理科 大問2から引用

出典:洗足学園中学校『2024年度入学試験問題 理科』大問2(問題図・表を含む)

解答:(1)イ、オ
(2)エ
(3)(あ)5.0、(い)10.2、(う)1.2
(4)水溶液中のカルシウムやマグネシウムは試薬Aよりも試薬Bとくっつきやすいというちがい
(5)1.8mg
(6)0.48mg
(7)646.8mg/L
(8)カルシウム105mg、マグネシウム35mg

前半では、水源によって硬度がどう違うかを図1から読み取ります。図1では地下水の方が高硬度側の割合が大きいので、(1)のイは正しい。カルシウムを多く含む水が鍾乳石をつくるためアは誤り、地下水には180mg/L以上もあるためウも誤りです。ヨーロッパの水は日本より硬度が高いのでエも違います。温泉でせっけんが泡立ちにくかったことは硬水の性質と一致しますから、答えはイ、オです。

(2)は石灰岩の性質を問う問題です。石灰岩の主成分である炭酸カルシウムは塩酸と反応し、二酸化炭素を発生します。したがってエです。

(3)は表の比例関係を使います。カルシウム2.0mgに必要な試薬Bは、3.0×2.0÷1.2=5.0mL。カルシウム3.0mgからできる沈殿は、6.80×3.0÷2.0=10.2mgです。試薬Bを5.0mL使うマグネシウムの量は、0.3×5.0÷1.25=1.2mg。よって(あ)5.0、(い)10.2、(う)1.2となります。(4)では、試薬Bを加えると、試薬Aと結びついていたカルシウムやマグネシウムがAから離れてBと結びつき、Aが青色に戻ります。カルシウムやマグネシウムは、試薬Aより試薬Bと結びつきやすいという違いです。

(5)(6)は、沈殿からカルシウムを先に求めます。実験2ではマグネシウムに硫酸を加えても沈殿ができないので、実験3の6.12mgの沈殿はカルシウムによるものです。カルシウムは0.6×6.12÷2.04=1.8mg。この1.8mgが使う試薬Bは1.5×1.8÷0.6=4.5mLです。全体の6.5mLから4.5mLを引いた2.0mLが、マグネシウムに使われた分になります。したがって、マグネシウムは0.3×2.0÷1.25=0.48mgです。

(7)は10mL中の量を1L当たりに直すので、それぞれ100倍します。カルシウムは180mg/L、マグネシウムは48mg/Lです。硬度は180×2.5+48×4.1=646.8mg/Lとなります。(8)は、1L中のマグネシウムをx mg、カルシウムを3x mgと置きます。硬度の式は3x×2.5+x×4.1=11.6x。11.6x=406からx=35となるので、マグネシウムは35mg、カルシウムは105mgです。